Re-BORNプロジェクト
Re-BORN;Re-entry Education and Bridging for Obstetricians’ Return Network
※令和7年度佐賀県TSUNAGIプロジェクト採択事業
本プロジェクトの発端には,地域医療の人材構造と医師のキャリア再構築をめぐる社会的課題の両側面が存在する.
佐賀県における地域の総合病院や分娩取扱施設の医師数は減少傾向にあり,特に夜間・休日の分娩対応や母体救急への即応体制は限られた人員で維持されているのが現状である.背景には,産婦人科医の高齢化,診療負荷の高さ,若手医師の都市部偏在などの複合的要因がある.このような医療供給側の制約に対し,供給を増やす方法の一つとして注目されているのが「一時離職中の医師の復職支援」である.出産・育児・配偶者の転勤・留学・研究専念など,多様な理由で臨床を離れている医師の中には復帰を望む者も多いが,復帰へのハードルは高い.
・診察手技・判断能力・チーム医療への関与に対する不安
・専門医制度や新制度に関する知識の空白
・家庭との両立(特に子育て期)に伴う勤務時間制限
・医局制度・病院組織内でのポジション不在
・「できないことを責められるのでは」という心理的萎縮
これらの背景から医師本人の意思だけでは復職が困難な構造ができあがってしまっており,潜在的な人的資源が有効活用されていない.
さらに若手専攻医に関しても,新専門医制度下での教育には制度上の制限や地域間格差があり,希望する診療手技を十分に経験できないまま,地域病院での当直・分娩管理を求められる事例も存在する.そのため,初期的支援や補完的教育が必要とされている.
このように,医師側には「学び直したい」「不安を解消して現場に戻りたい」というニーズがあり,地域医療側には「とにかく人手がほしい」「教える余裕はないが来てほしい」という逼迫した実情がある.
この両者のニーズは本来,接続されるべきものであるにもかかわらず,教育の場がなく,人的余裕もなく,制度の後押しも乏しいために「接続の仕組み」が存在していない.
Re-BORNプロジェクトはこの乖離を埋める新たな教育・貢献モデルである.教育の場に復職希望者や若手医師を迎え入れ,一定期間のトレーニングを提供しながら,その間に地域医療の支援的役割も担ってもらう.
この「教育」と「人的資源の供給」とを同時に達成する実装モデルが,本プロジェクトの背景的要請である.
Re-BORNプロジェクトは医師の臨床再出発を支援しつつ,地域医療の持続可能性を確保するという二重の社会的要請に応えるべく構築された.本プロジェクトの主要な目的は以下の3点に整理される.
1.臨床ブランクのある医師の「再起動」支援
出産・育児・家庭の都合などで臨床現場を一定期間離れていた医師が再び医療現場に立つ際には,大きな心理的・技能的ハードルがある.
これまでの多くの復職支援プログラムは雇用調整や復帰後の就業支援に焦点を当ててきたが,実際には「その前段階」である“学び直しの場”,“実技の再体得の機会”が欠落していた.Re-BORNプロジェクトは復職医が自信を持って再び診療に関われるようになることを目的とし,「復職準備教育」という領域を制度化・定着化させる.具体的には段階的な手技訓練,緊急対応の確認,チーム医療コミュニケーションの再確認などを通じて,医師が再び安心して現場に立てるように支援する.
2. 若手専攻医の技術補完と判断力強化
新専門医制度や医局再編の影響で,専攻医の診療経験には地域間・施設間格差が存在している.
特に産婦人科領域では症例数・手技機会・緊急対応の経験が専門医試験や将来のキャリアに直結するため,自己効力感の獲得が重要である.
Re-BORNプロジェクトは若手専攻医に対しても実技訓練やフィードバック機会を提供し,OSATS・Mini-CEXによる客観評価を通じて,自己評価とのギャップを見える化する.そのうえで,自信と実力を兼ね備えた次世代医師の育成を目指す.
3. 地域医療現場への即効的な人的支援
Re-BORNプロジェクトの最大の特徴は,教育プログラムそのものが地域医療への人的貢献を同時に果たす構造にある.研修生(復職医・専攻医)は研修期間中に地域病院や大学附属病院の分娩,外来,当直などに「補助的実働スタッフ」として加わる.これにより,現場では医師不足の一時的補完となり,かつ指導負荷が過重とならない範囲で教育が成立する.
「教育=支援」のハイブリッド構造は,従来の再教育制度では実現されていなかった点であり,本プロジェクトが独自性と即効性を兼ね備えるゆえんである.この3つの目的を同時に実現することにより,Re-BORNプロジェクトは医師キャリア支援と地域医療政策を架橋する次世代型の教育・貢献モデルとして位置づけられる.

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