ご挨拶

ご挨拶

横山教授

佐賀大学産婦人科 教授の横山です。

当科は1979年に開講し、杉森教授、岩坂教授と歴代の教授を経て、初めての母校出身の産婦人科教授として、私が2012年に就任いたしました。

私の研究分野は主にヒトパピローマウイルス(HPV)とそれにより発症する子宮頸癌であり、子宮癌による死亡数がなかなか減少しない佐賀県のために、子宮頚癌検診やHPV検査、HPVワクチンの拡充にも心血を注いで参りました。

HPVワクチンについては、その弊害が必要以上に大きく報道され、貴重な効能が表に出にくい状況に陥っており、海外と比較して日本は全くもったいない状況にあります。

ワクチンや、定期的な検診という手段が整っており、子宮頸癌は確実に予防できるがんでありながら、子宮頚癌検診の受診率はなかなか上がらず、併せて、子宮頸癌の患者は減るどころか、低年齢化し、更に広まりつつあります。

佐賀県における、75歳未満の子宮がん年齢調整別死亡率は、年々増加し、平成29年には全国で最も高い数値となっています。これには至急の対策が必要です。
2019年度からは、子宮頸癌の罹患率が最も高い30歳~44歳の女性を対象として、4年間期間限定の無料HPV検査併用の子宮頚癌検診が佐賀県全体で始まっています。
この機会にどうぞみなさん、子宮頸癌の予防意識を持ち、定期検診の習慣をつけていただきたいと思います。

当科では子宮頸癌をはじめとした、婦人科腫瘍全般の治療を行っています。
子宮頸癌の治療は細かく分類される臨床進行期により決定しています。
子宮頸部異形成や初期の子宮頸癌症例には子宮頚部円錐切除を行います。例年、40症例以上の子宮頚部円錐切除を施行しています。この手術は術後に通常の妊娠、分娩が可能であり、かつ初期の子宮頸癌であれば治癒切除も期待できます。
進行期の子宮頸癌に関しては、放射線治療の高い治療効果が望めるため、多くの症例に放射線治療を行っています。
卵巣癌、子宮体癌といった婦人科腫瘍は手術療法が基本ですが、適宜化学療法を組み合わせて治療を行っています。

現在化学療法のほとんどが外来で施行できるようになりました。病院の再整備に伴い、婦人科病棟ともに、外来化学療法室も新しくなり、患者様により快適な治療をご提供できるようになっています。必要に応じて、入院での化学療法も行っております。婦人科腫瘍の治療終了後は、当科外来にて責任もって経過観察を行っています(通常5年以上)。

当科の周産期分野は、周産期専門の医師を中心とし、他科と連携して診療を行っています。当科で分娩される方に特に制限は設けていませんが、他院からご紹介いただく、合併症をお持ちの患者様が多い傾向にあります。内科、精神科、神経内科、小児科などと連携をとり、協力して周産期管理を行っています。早産の既往がある方には、佐賀県の早産対策プロトコールに乗っ取って、早期から介入を行い早産予防に努めています。医学的な背景だけではなく、社会的な背景も妊娠出産には大きく関わってきます。妊娠中から、メディカルソーシャルワーカーにも介入を依頼し、社会的な問題点の解決にも尽力しています。

NICU、小児科医師とも連携をとり、出生後に早期治療が必要な症例は十分な準備を整えて分娩に臨んでいます。

分娩は、過度な医学的介入は行わず、助産師主導で自然な分娩を目指しています。必要時には陣痛促進、医学的適応による和痛分娩、吸引分娩などを行います。緊急帝王切開はいつでも対応できる体制を整え、帝王切開時には、小児科医師が必ず立ち会っております。 

今年度も病院の改築が続いています。受診、入院される患者様には誠にご迷惑をおかけいたします。工事中は大変ご不便かと思いますが、再整備完了後には、より快適な環境を整え、皆様にご提供できると思っております。

今後とも当科を宜しくお願い申し上げます。

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